世界最大の湖「カスピ海」は海になった

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世界最大の湖「カスピ海」

みなさん、世界に「湖」は、いくつあると思いますか?

周囲を陸地で囲まれた深く大きな水たまりを湖と言いますが、実は、厳密な定義はなく、池や沼とはっきり区別する基準もありません。

なので、世界に湖がいくつあるか正確な数は分かりませんが、推定では大小合わせて3億個程度あるといわれています。

そんな中、世界で最も大きな湖は中央アジアと東ヨーロッパの境目にある「カスピ海」です。

世界最大の湖「カスピ海」

カスピ海の広さと深さ

世界最大の湖である、カスピ海の面積は約37万4,000㎢
これは、日本の国土面積とほぼ同じ大きさであり、日本一大きな湖である琵琶湖のおよそ560倍もあります。

カスピ海と日本の国土面積はほぼ同じ
カスピ海の面積は琵琶湖の約560倍

平均水深は208mで、北から南にかけて深くなっていき南部の最も深い場所は深さが1025mもあります。

カスピ海は「塩湖」

湖の水といえば普通は淡水をイメージしますが、カスピ海の水は少し塩辛い水です。(海水の1/3程度) 

このような塩辛い水質の湖は、塩の湖と書いて「塩湖」と呼ばれています。
※塩湖(1リットル中の水に0.5g以上の塩分を含む湖)

塩湖はカスピ海の他にも観光地として人気がある「ウユニ塩湖」や、体が沈まない湖として知られる「死海」が有名です。

南米のボリビアにある「ウユニ塩湖」

なぜ「海」と呼ばれているのか?

カスピ海は「湖」ですが、なぜ「海」と言う名前がつけられているのでしょうか?

その理由ははっきりとは分かっていませんが、一説には古代の人々がこの巨大な水たまりを発見した時に、「水が塩辛い!」という理由で「これは海だ!」と判断し、それがそのまま、言い伝えられてきたからと言われています。

現在は陸地に囲まれた大きな水たまりが「湖」か「海」かを分類する基準は他の海と繋がっているかどうかです。

例えば、カスピ海のすぐ近くにある「黒海」は、カスピ海と同じぐらいの規模の面積がありますが名前のまま「海」として分類されています。

「黒海」は名前の通り海に分類されている。

黒海は全方位を陸地に囲まれているように見えますが、地図をよく見てみると細い海峡(ボスポラス海峡)が存在しており、そこから別の海に繋がっています。

黒海はボスポラス海峡を通じてマルマラ海に繋がっている。

一方、カスピ海は流れ込む川こそありますが、どこを見ても他の海とは繋がっていません。

カスピ海は他の海とは繋がっていない

このように、水たまりの周囲が完全に陸地に囲まれているものは、海という名前がついていても地形上では「湖」として分類されるのが一般的です。

カスピ海が「海」になった理由

しかし驚くことに、2018年に「湖」であるはずのカスピ海が名前の通り本当に海」になったのです。一体何が起こったのでしょうか?

実はこれには、地形上の分類という枠を超えた面倒な政治問題が深く関係しているのです。

資源をめぐる「領海問題」

今からおよそ30年前まで広大なカスピ海に隣接する国は、ソ連とイランの2ヶ国しかありませんでした。

第二次世界大戦の頃に結ばれた2ヶ国の領有協定では、カスピ海を共同で管理していくことが宣言されており平等な利用が定められていました。

カスピ海の法的地位を規定した文書が1921年と1940 年にそれぞれソ連とイランとの間で締結された

しかし、1991年にソ連が崩壊し、それぞれの国が独立してカスピ海の沿岸国は、2ヶ国から5ヶ国にまで増えてしまいました。

1991年ソ連が崩壊し、カスピ海の沿岸国は2ヶ国から5ヶ国に増えた

元々、カスピ海周辺は石油産業が活発な地域でしたが、ソ連崩壊と共にカスピ海の海底に眠る豊富な石油や天然ガスに、沿岸国は目を向けるようになります。

そして、その莫大な資源の分配を巡って各国は自分たちにできるだけ有利になるように動き始めます。

ここで重要になるのが、カスピ海を「海」ととらえるか「湖」ととらえるかという問題です。
実は、カスピ海の資源の分配を決めるときに「海」か「湖」かどちらに定義するかによって、沿岸各国それぞれの取り分が異なるのです。

カスピ海が「湖」と定義されたら

例えば、カスピ海がそのまま「湖」と定義された場合「資源の領有権は沿岸5カ国でそのまま共同管理」されることになります。

カスピ海が湖であれば「資源は5カ国で共同管理」することになる

カスピ海が「海」と定義されたら

一方、カスピ海が海」と定義された場合「国連海洋法条約」という海についての国際法が適用され、その条約に基づいて「資源は海岸線の長さに応じて分割される」ことになります。

カスピ海が海であれば「資源は海岸線の長さに応じて分割」される

「海」になると困るイラン

海と定義してカスピ海を分割した場合一番困るのはイランです。
なぜなら、イランの領域となるカスピ海南部の海底には天然資源があまりないからです。

そのため、「海」と定義されると経済的に大損をするイランは5ヶ国の中で唯一カスピ海は湖だという主張をしたのです。

自国の領海では資源の採掘が見込めないイランにとっては、カスピ海は湖とする方が得策なのです。

国際的孤立の危機にあったイランが譲歩

この海か湖かという論争は20年以上にわたって繰り広げられましたが、2018年に決着を迎えます。

当時、アメリカによる強い経済制裁を受け国際的孤立の危機にあったイランがロシアなど周辺国との関係強化を図るためにカスピ海での自国の主張を大幅に譲歩したのです。

2018年に開催された5カ国の首脳会議で、湖であるとこれまで強硬に主張してきたイランが譲歩した

このことにより、各国沿岸から15海里が領海として設定されることになり事実上カスピ海は「海」とみなされるようになったのです。
領海外の地下資源の分配に関しては、隣国同士の協議で解決することとなっています。

各国沿岸から15海里(約28km)をそれぞれの領海とした

「海」か「湖」の定義は明確にされなかった

領海が設定された事で法的には海とみなされる事となったカスピ海ですが、しかしながら、沿岸国による協定ではカスピ海が「海」か「湖」かという明確な定義はされなかったのです。

カスピ海は「海」または「湖」とも定義せず「大陸内水域」とした

なので先に解説した通り、地形上の分類においては、陸に囲まれた閉ざされた水域であるカスピ海は、湖という見方にも間違いはありません。
つまり、現在のカスピ海は「海であって湖でもある、または”どちらでもない”」とても曖昧な水域として存在しているのです。

今回は世界最大の湖「カスピ海」についてご紹介しました。
動画でも紹介しているので是非見てみてください!



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